イベントレポート

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なぜ今、シェア保育園が必要とされているのか?(前編)

「つながりシェア保育園・よよぎうえはら」開園を祝う会・イベントレポート

2019年4月6日桜満開のなか、つながりシェア保育園・よよぎうえはらにてトークイベント、「新しいつながりを生む『シェア保育園』の可能性~日本初クラウドファンディングで作るシェアハウス併設型保育園とコミュニティ作りの未来~」が開催されました。
つながりシェア保育園に関わる方、支援者、地域の方などが一堂に会し、本プロジェクトの起案者である正和学園理事長とシェア保育園ができるまでとその未来を語り合うイベントです。ジャーナリストの佐々木俊尚氏、シェアリングエコノミー協会の佐別当隆志氏をゲストに迎え、「なぜクラウドリアルティを使ってシェア保育園が実現できたのか」をテーマに起案者と出資者がリアルな想いを語り合いました。

「渋谷区上原シェア保育園プロジェクト」概要
当プロジェクトは、不動産に特化した投資型クラウドファンディング「クラウドリアルティ」を活用して、企業主導型保育事業用の土地取得のための資金調達を行いました。対象とする物件は、渋谷区上原地区に所在しており、渋谷区内では最も待機児童人数が多い地区(2014年12月1日時点)になります。保育施設の運営は、幼稚園や保育園を中心に、複数の施設運営の実績を有する正和学園が担います。保育事業については、企業主導型保育事業制度を活用し、提携企業社員の子どもが優先的に入所できる仕組みになっております。地域枠も設け、近隣の待機児童解消にも貢献します。

プレスリリース
投資型クラウドファンディングで初となる保育園用地取得の取り組み「つながりシェア保育園・代々木上原」が正式オープン

Profile

学校法人正和学園 理事長
齋藤 祐善 Saito Yuzen

1973年生まれ。ITベンチャー、保育園副園長、町田市議などを経て現在、学校法人 正和学園理事長。「新たな時代の保育」を求めて模索しつつ、仲間を募集中。


作家・ジャーナリスト
佐々木 俊尚 Sasaki Toshinao

1961年兵庫県生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。毎日新聞社などを経て2003年に独立し、テクノロジー・メディア・社会・ライフスタイルなど幅広く取材・執筆している。近著は「21世紀の自由論~『優しいリアリズム』の時代へ」。総務省情報通信白書編集委員。TABI LABO創業メンバー。TOKYO FM「タイムライン」MC。フジテレビネット放送・ホウドウキョク「あしたのコンパス」アンカー。テレビ東京「未来世紀ジパング」レギュラーコメンテーター。


株式会社ガイアックス ブランド推進室/一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局/Miraieオーナー
佐別当 隆志 Sabetto Takashi

2000年より、ソーシャルメディアのトータルソリューションを手掛ける株式会社ガイアックスに所属。広報・新規事業開発を経て、2015年秋よりシェアリングエコノミーに特化したWebメディア「Share! Share! Share!」をリリース。2016年1月一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し事務局を運営。内閣官房IT総合戦略室から任命されたシェアリングエコノミーの伝道師であり政治起業家としても活躍中。


(以下敬称略)

目次

クラウドファンディングで"所有"のシェアを実現

佐別当まず初めにこのプロジェクトの起案者である齋藤さんに聞いてみたいと思います。どういう想いでこのプロジェクトを立ち上げたのでしょうか。

齋藤わたしども正和学園は創業80周年で結構老舗なのですが、それゆえに新しいことがしたいなと考えていて、そのアイデアのひとつが「シェアの発想で保育所が作れないか」というものでした。保育所が不足しているということについては行政に文句ばっかり言って、作れない作れないと嘆くのではなく、「みんなで作れないか」という視点からこのプロジェクトを考えました。

写真左:佐々木俊尚氏 中:佐別当隆志氏 右:齋藤祐善氏
写真左:佐々木俊尚氏 中:佐別当隆志氏 右:齋藤祐善氏

保育所をつくるというのは本来土地があって事業計画があって初めて役所に申請が出せます。このプロジェクトでは幸いクラウドリアルティで資金が集まって土地を購入できたので役所に申請が出せました。ここが選ばれた理由は金額もそうですが、渋谷区がクラウドファンディングに適した土地柄ということも大きいのではないかと考えています。

渋谷区長が進めている区政のスローガンに「ちがいを ちからに 変える街」というものがあります。ダイバーシティってよくいろんなところで言われていますけど、違う人たちが集まることによってそれを力に変えていこうという自治体って素敵だなと思っていて、そういったことにも着想を得ながら構想を描いていきました。端から端までシェアリングのコンセプトでつくれないか、というのがこのプロジェクトの試みです。

まず初めにシェアリングのコンセプトで大事なのが"所有"のシェアです。普通は社会福祉法人とか学校法人とか株式会社が保育所を所有して、そこにサービスとして提供する保育というのが一般的です。そうではなくて「みんなで作る」というところからスタートして所有も分散されていることが可能ではないかと考えました。シェア保育園はそのコンセプトからクラウドファンディングで資金調達をするという形をとりました。

これからはシェアハウスの方々も一緒になって保育を展開していきます。職員にはサービス提供者としての訓練をしていくというよりはむしろコミュニティづくりのファシリテータとして活躍してほしいと考えています。

写真左:佐々木俊尚氏 中:佐別当隆志氏 右:齋藤祐善氏

次に保育所は行政からの助成金などで通常は作ることが多いのですが、ここもシェアのコンセプトで"企業主導型"*という制度を活用しています。複数の企業がお金を出し合って作る共同保育の形で、内閣府がこの制度で採択された事業に対して認可保育園と同じくらいの助成金を出します。基準も厳しいのですけども、内閣府の部署に相談してなんとかこの制度を活用することができました。どこの会社も働き方改革に積極的で、シェア保育園はほとんど企業枠で埋まっています。

*企業主導型保育事業とは(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/ryouritsu/tachiage/1_01.html

最後に保育士だけが"保育"を提供するのではなく、地域の方、一緒に住む方が一緒に"保育"をつくっていこうというものです。シェアハウスを上の階に、子育て支援の場として地下の事務所を開放したりできるように設えています。これで端から端までシェアリングのコンセプトで貫いています。30名で小さいとはいえ大きな家族、子ども同士、大人同士も子育てのシェアが広がっていく、そういう想いがこめられています。

開園を祝う会では東京都知事小池百合子氏より祝電が届けられた
開園を祝う会では東京都知事小池百合子氏より祝電が届けられた

今求められる、街と仲間とつながる暮らし

佐別当佐々木さんに聞いてみたいと思います。シェアハウスとか保育園のシェアってどう考えておられますか?

佐々木このシェア保育園がある上原二丁目というと高級住宅街でいいところなんですけど、それだけではなくて「自由で多様性のあるゆるやかな街」っていうところです。こんな街は住むには理想的だと思って数年前にこちらに引っ越してきました。

写真左:佐々木俊尚氏 中:佐別当隆志氏 右:齋藤祐善氏

もはや我々の住まいとかライフスタイルって、高級なタワーマンションに住むとか、戸建てを建てるとか3LDKより4LDKがいいとかそういう話ではなくて、"どこの街に住むのか"というのが重要になってきていますよね。つまり、街というものが住まいで完結するのではなく、住まいの外側も含めて暮らす、ということなんだと思います。

ミニマリストっているじゃないですか。シンプルな六帖一間で暮らしている彼らに話を聞くと、僕らは家の中で生活を完結させているのではなくて街で暮らしているんですと。例えば、近所の素敵なカフェが僕のダイニングです、近所のコンビニがうちのキッチンですと。そういう話を聞いていると街に開かれた暮らしがいいんじゃないかなと思いますね。

多くの人はマンションで暮らしていて、住まいが鉄の扉で区切られている。それは実は伝統的ではなくて、恐らく近代になってからなんです。昔の家、田舎の農村では玄関の扉にはカギをかけません。土間の縁側で近所のおばちゃんが話をはじめたりして、家の外と中が繋がっていたんですよね。

例えば、家の中で孤立して生活をしていると共働きで子育てができるのかと不安になります。でも家の外側に仲間がいて同じマンションの住民がみてくれる安心感があると子どもを産んでもいいんじゃないか、とそういう感覚になるらしいんですね。

だから家の中だけで生活を完結させるのではなく、家の外側の街とか近所とか仲間とつながる暮らしっていうのは今、強く求められているのではないのかなと思います。
だからこういうシェア保育園・シェアハウスがこういう場所にできるのは時代の必然であり、この流れは今後も進んでいくんじゃないでしょうか。

写真左:佐々木俊尚氏 右:齋藤祐善氏

最近いろんなシェアハウスに住んでいる若い人たちと仲良くしている中で、人間にとってコミュニティは必要不可欠で、それ無しでは生きていきていけないのだと感じています。類人猿からそうで人間は100人くらいの集団生活が理想的だと原始の時代から言われています。

でも今の時代は企業社会が崩壊して、終身雇用がなくなり、非正規雇用も増えてそういう共同体はなくなっている。かといって今さら昔の農村の共同体に戻れるわけでもなく、都会に住む我々がいったい何に所属しているのかわからないってことが起きています。そんななかでシェアハウスの共同体を模索している人たちが出てきています。

育児を夫婦で完結させるわけでもなく、親戚に預けるわけでもなく、縁もゆかりもない住人たちで育児も共有するっていう世界が始まっています。生活を共有するだけでなんとなくどこかに所属して気持ちいいよねって感覚になりつつある。この流れは今後20~30年、この日本のベースとなるある種の新しいつながり方の感覚になっていくのではないかなって私は信じています。

こういう開かれた形の保育園、そこにシェアハウスもついていて、シェアオフィスもついてきて、将来コワーキングスペース、キッチンスタジオも一緒になったり、いろんな人が交流しながら偶然出会ったなかでコミュニティの感覚が生まれていくようなことを進めていく。こういったことが我々にとっての21世紀、この令和の時代の新しい安心感、つながりの感覚になるのではないかと思っています。
ですからこのシェア保育シェアハウスの開所には非常に期待しています。


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「つながりシェア保育園・代々木上原」開園を祝う会の様子

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