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隆範

地球一周建築旅を通して見えてきた、日常の中にある“旅”

京町家を改装した宿泊施設の資金調達を数々手掛けたこともあり、クラウドリアルティのユーザーには建築・旅行に関心がある方も多くいらっしゃいます。

そうした建築・旅行を愛するユーザー向けに、各国の建築を見るために地球一周旅行を果たした現役大学生ライター・隆範さんに、旅先で出合った特別な建築と、旅を通して見えてきたものについてご寄稿いただきました。

建築を知ることへの使命感から始まった地球一周旅行

人は未だ知らないことに対して、心の底に潜む畏怖と湧き立つ程の好奇心を向けますが、旅はまさに未知に挑む本能といえます。

僕は世界中に存在する名建築と出合うべく、地球一周を果たしました。建築家を目指す僕は、建築を知ることへの使命感に駆られて日本を飛び出したのです。というのも、多くの偉大な建築家は「旅をしなさい」と勧めるからです。僕はこの旅で、その真意に気付くことになるのですが。

現在(2020年5月時点)、COVID-19によって外出することさえ困難な状況ですが、COVID-19以外にも、世界中には解決すべき問題が数多く存在します。

多様性のある社会のために、如何に個々人の権利を尊重できるか。地球規模で、如何に持続可能な開発を行えるのか。こうした問題に対して自らが問題意識を得るためにも、先ずは外の世界を知ることを始めなければならないと考えています。

そして、世界を知るのに建築ほどふさわしいものはないと思っています。建築を見るということは、その土地の人々の生活や習慣によって現れ出る価値観を見るということだからです。建築は、人の深層に在る想いによって建てられ、街は人々の想いが集積したものですから。

スイスの雄大な山岳地帯の中に建つ聖ベネディクト教会

今回紹介する建築は、スイスの山岳地帯の先に建つ、聖ベネディクト教会です。教会というのは特に、地域に住む人々が日常の中で訪れる場であることから、人々の価値観をうかがい知ることができます。

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実はこの建築、僕の旅でも指折りの秘境に建つものでした。

スイスの都市チューリッヒから、オーストリアを掠めるように時計回りに移動します。Chur(クール)近くで一泊。聖ベネディクト教会がある地に最も近い、Ilanz(イランツ)にあった民宿に一泊。

一時間に一本の電車に飛び乗って三十分。そこから一時間以上の登山です。

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僕がここまで時間をかけてでも訪れたかったのは、この建築を設計した世界的に注目される建築家「ピーター・ズントー」の緻密な仕事を見る為でした。

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階段を六段のぼり、壁が隆起したような入り口のドアを開けると、三歩先に段がもう一つあります。その上がった先がこの教会の主空間です。

この動きの手順が、舟に乗る際の手順と同じであることに気がつくでしょうか。聖ベネディクト教会は、スイスの山頂から空へと出航する一隻の舟なのです。

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一歩船内に入れば空間の全てを見渡せます。その場で呼吸が整うまで立ち止まることは、限りなく自然的な行動でした。目前には六脚の長椅子、空間の中で焦点は司祭が立つ場にあり、その全てが同一平面の床上(プラットフォーム)にあります。

ハイサイドから射し込む光は対の壁面に当たり、その反射が空間内に拡散されて明るさを保っていました。そしてやっと、僕はどこに腰を下ろそうかと考え始めたのです。

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聖ベネディクト教会は急斜面から飛び出すように建っていますが、この眼下にはいくつかの住宅が立ち並んでいます。

決して便利とは思えない山岳地に、雄大な景色を望みながら生活するというのは如何なるものなのでしょうか。

良い建築とは、日常に溶け込む特別な空間

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私がこの地へと訪れた際、中国とアメリカから来た建築を志す若者と出逢いました。このように、世界中から人が訪れる建築でありながら、一方で町の人は近くで井戸端会議をしています。

世界的な評価を集める建築であるほど、その存在は生活に溶け込んでいて、土地に暮らす人々は日常のものとして使っているものです。

本当に良い建築とは、特別でない生活の延長にこそある特別な空間だったのだと気付かされました。

世界を旅するように、日常を旅するということ

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旅で気付かされることは数多ありますが、異なる文化に触れてその多様さを知ることは、さほど重要なことではありません。旅の中でより重要なことは、多様な営みの中から共通点を探ることにこそあるのだと、世界一周を終えて帰国した今、思います。

異なる文化を持っていても、そこに“人”がいる限り、同じように営みがあります。その価値に目を向けたとき、自分が過ごす日常の景色が人類としての壮大なスケールを持っていることに気がつくのです。

僕達の何気ない生活も、地球の裏側で同じような営みがあると思えば、どこか日々の暮らしも旅する気持ちになります。

思えば僕達は、生まれた時から旅をしてきたはずです。発見はどこにでも転がっていたし、どんなものも新鮮でした。しかし、その新鮮さに慣れてきて、自分が旅をしていることをいつしか忘れていました。

建築家は「旅をしなさい」と言うけれど、旅は何かを発見をする練習であって、本当に意味のあることは「普段の生活の中を旅することだった」ということを、地球を一周してみて思ったのです。


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Profile

隆範(りゅうはん)

1998年愛知県生まれ。18歳で僧侶となり、建築学に打ち込む。茶道と建築を合わせたワークショップ『アーキテク茶会』や、プログラミングを使った禅と映像のインスタレーション『上善若水』、キビタキとシジュウカラの為の『100の巣箱』など、建築の可能性を探求した幅広い制作を行う。日本建築学会主催『建築学生サミット2018秋』や、中部地方最大の建築学生団体『NAGOYA Archi Fes2019』を主導し、現在は地方都市のまちづくりを提案するチーム『まにまに』を率いている。
Twitter:@o_yutaka0113
Instagram:ytk_oa4


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